「研修講座ソーシャル・マネジメント」の提案

厳しい現実に直面する自治体

今、自治体を取り巻く環境は大きく変わっています。

地方部では、急速な過疎化が第一次産業の衰退、地域経済の担い手不足を生み、都市部では、自治会などコミュニティの弱体化、行政ニーズの複雑化、土地・家屋の放棄等の課題を抱えています。地方・都市を問わずとくに基礎自治体では、「自己責任」のもと、厳しい現実的課題に向き合わざるを得ない状況が続いています。

一方で、ツイッターやフェイスブックに代表されるSNSの登場は、住民同士、住民と自治体、住民と議会など様々なアクターをつなぎ、住民自治を呼び覚ますものとして行政分野にとっては新たな課題発見の可能性を広げ、自治体変革をもたらしています。

自治体は、こうした未だ経験したことのない領域に勇気を持って踏み出さなくてはなりません。それらを担うのは、首長、議員、住民、住民組織です。とりわけ、自治体職員は、厳しい現実に日々直面し、住民に寄り添いながら課題解決に専心しているのではないでしょうか。

問題解決としてのソーシャル・マネジメントの提案

そこで日本通信教育学園ではソーシャル・マネジメント研究会を立ち上げ、この厳しい現実に立ち向かう自治体職員の皆様を応援する研修事業を提案いたします。

これからの自治体職員には、業務における専門知識は勿論のことですが、問題解決を図るための政策立案能力とそれを推進させるための経営能力、調整能力が求められています。専門的知識は分野ごとに当然必要なものですが、それらの知識に捉われることなく生活者の目線で課題解決にのぞむ姿勢、前向きな意識を持ち地域の課題を発見・可視化させ、臨機応変に柔軟に対応できる、伸び代のある自治体職員が将来の地域を担う要となります。

そのためには、これまでの自治体職員研修をダイナミックに変革あるいは拡大していく必要があります。私たちは、既存の枠や概念を考え直し、新しい価値創造を求める構想力を「ソーシャル・マネジメント」と呼び、将来の自治体職員の育成をこの「ソーシャル・マネジメント」を養う研修として行ってまいります。

日常業務を超えて新しい価値を生み出す社会的な知識・能力

「ソーシャル・マネジメント」は、問題の在り処・本質を的確にとらえるためのソーシャル・マーケティングと、民間企業の手法を取り込み、業務の効率化と成果の最大化を求めたニューパブリック・マネジメントから生まれました。換言すれば、決められた手続きに沿って漫然と事務を進めるのではなく、何が大事な本質であるかの原点に立ち返り、問題解決に関わる全ての人たちとの活動を通して解決の糸口を探るその社会的な知識・能力を指しています。

自治体が抱える課題解決に向かって、私たちは行政のみならず様々な分野の研究者や実務家による研究会を組織し、事例研究を重ねてまいりました。そしてこのたび、その研究成果を市町村の皆様にお伝えすることで少しでも皆様が抱える問題解決に役立てばという思いで「研修講座 ソーシャル・マネジメント」を立ち上げました。

新しい知見を発見するプロセスの開示

各講師は専門分野を持っていますが、この研修講座はそれぞれの知識を披露するのではありません。学問的体系や経験にこだわることなく、既存の知見が現実と具体的に切り結ぶことで生じる新しい価値の発見を皆様と共有いたします。そのプロセスの開示こそ、この講座の特徴なのです。したがって、それぞれの講師が考えるソーシャル・マネジメントのとらえ方や方法は多様です。方法や答えは一つではありません。抱える問題や条件によって異なります。この研修の中から一つでも新たな「気づき」が職員の皆様の中に生じ、それを日々の業務の中で実地し成果を上げていただければ幸いです。

ソーシャル・マネジメント研究会代表 井関利明

一般財団法人 日本通信教育学園理事長 田中英弥